秘密工作員クローバー3へ。
好戦派がついに主導権を握った。予定通りの秘密工作を開始せよ。君は既に十分な時間を使って、敵組織に溶け込んだはずだ。素晴らしい肉体と美貌で敵幹部も籠絡したはずだ。その信用と影響力を用いて破壊工作を行え。我が軍の勝利は君に掛かっている。以上である。
それを読み終えたおばあちゃんは顔を上げて困った顔をした。「若い頃の話を今更持ち出されてもねえ。籠絡した幹部はとっくに引退して半数以上が死んでるし。どれ、このひからびた美貌で現在の幹部を籠絡するのは苦労しそうだけど、まあやってみようかねえ」
既に孫に囲まれた苦労性のお婆ちゃんは、どっこいしょと腰を上げた。
(遠野秋彦・作 ©2011 TOHNO, Akihiko)